屋久島は周囲約132km。火山島ではなく、大部分は花崗岩からなっている。中央部には日本百名山の一つで九州地方最高峰の宮之浦岳 (1,936m) がそびえるほか、他にも数多くの1,000m級の山々を有し、「洋上のアルプス」の呼び名がある。
昨年7月、8年間の陸上生活を終え海上復帰し、その後の6ヶ月の乗船期間中に計画していた、2泊3日の屋久島縦走を実行に移すことになった。初めての単独屋久島縦走、どんなことになるか分からないが、とにかく挑戦してみようと思う。旅費節約のため行きは、高速船ではなく夕方発の貨物フェリーを利用し船で一泊して、朝、宮之浦港に到着する便に乗ることにする。フェリーの発着する鹿児島港へは、完成して間もない九州新幹線さくらを利用することにする。60リッターのザックは、あれもこれも持っていこうということで、多すぎる装備で少し重い・・・。
歩行距離 | 9.0km |
所要時間 | 8時間00分 |
累積標高差 | (+) 889m (-) 618m |
コース |
高塚小屋08:00 → 新高塚小屋 → 焼野三叉路 → 花之江河 → 石塚小屋 16:30 |
朝飯を食べ、使った区画の清掃をする。他の人は全員出発し小屋には自分一人だけだ。08:00高塚小屋を出発。朝寝坊してしまった。急登の木製階段を上っていく。疲労が回復せず足が鉛のように重い。第1、2展望台の岩場を上って行く。アップダウンが激しく道は厳しい。展望台からはガスで近くしか見えない。台風1号の影響か、風雨が強くなる。ガスがかり浮かび上がる山々の上には、巨岩がたくさん鎮座する。平石岩屋に達し、道はなだらかになる。部分的に木道が取り付けられている。永田岳への分岐、焼野三叉路を通過、宮之浦岳への登りが見えてくる。後ろに隠れて山頂を見ることはできな。登山道の周りにはたくさんのヤクシマアセビが咲いている。急登を登って行く。あそこが山頂だと思いそこまでいくと、まだ上の方まで登りが続く、一体どれだけ登ればいいのだろうかと喘ぎながら、最後の急登を登りきり、九州の最高峰・宮之浦岳山頂(1936m)に達する。360度の展望のはずだが、ガスで何も見えない。山頂には、他に先生らしき人と小中学生のグループがいる。
宮之浦岳から投石平方向に下山していく。栗生岳を経て翁岳、安房岳、投石岳の下のなだらかな道を行く。山肌には大きな岩がごろごろしている。地図によれば1750m程度の高度の山道を歩いていることになる。日本の最南端の高層湿原・花之江河に着く。雨が激しくうまく撮影できない。今回の山で失敗したことのひとつに、静止画用のデジカメと動画用のムービー(ハイビジョン)の2台を持ってきたことだ。使い分けが面倒だ。1台でハイビジョンの動画と静止画が撮れるカメラが必要だ。石塚小屋を目指し、花ノ江河から花ノ江河歩道の方向に進む。
16:00頃、石塚小屋(定員20名)に着く。2部屋あり、小さいほうの部屋を選ぶ。もうひとつの部屋には、先着の若者がリラックスしている。2日目になり疲れはピークに達する。炊き込みご飯を炊くが、食欲がなく沢山のこしてしまったので、明日食べるためにおむすびにする。残りの焼酎を飲み眠りにつく。
歩行距離 | 7.4km |
所要時間 | 7時間00分 |
累積標高差 | (+) 254m (-) 836m |
コース | 石塚小屋08:30 → 大和杉 → ヤクスギランドバス停15:30 |
08:30石塚小屋を出発する。雨は降り続く。雨を吸ったザックは重みを増し、肩に食い込む。5mおきに木に巻かれた赤いテープを頼りに安房歩道を歩いて行く。道は次第に悪路になりほとんど沢の上を歩いているようになる。ガスに霞む杉の木は、神秘的で絵になる。深い森の中を下っていく。大きな沢を横切る。増水時は危険だ。その後、下って行くうちに道を見失っていることに気付く。赤い道標のテープを見失ってしまったのだ。パニックになりかけたが、気を取り直し冷静考える。そうだ!「道に迷ったときは来た道を引き返し、もとの場所まで戻る」という鉄則に従い150mぐらい引返すと、赤いテープがあった。あ〜!よかった。単独行で頼れるのは自分の冷静な判断なのである。屋久島の縦走には何故ガイドを付けるのか?今その理由を理解することができた。
空はすこしずつ晴れてきた。今、宮之浦岳山頂にいたら絶景を見ることができたことだろう・・・。森は深く大きな屋久スギを見るようになる。尾根道の登山道を少し下ったところに大和杉があるので、余力を振り絞り見に行くことにする。縄文杉のように幹にコブがあり、堂々とした屋久スギである。幹は太く、長く空に伸びている。
谷筋の急坂を下ればヤクスギランドの遊歩道に出る。最後の木の階段を下っているとき足を滑らせ転倒してしまうが、ザックが下になりなんとか身を守ることがでる。とにかく這う這うの体で安房歩道を抜ける。ヤクスギランドにはいくつかの周遊歩道コースがある。荒川に架かる橋を渡り屋久杉、ヒメシャラなどの大木と亜熱帯植物が茂る。
ヤクスギランドのバス停に着きバスの時間を確かめると、すでに時間は過ぎバスは出ているではないか・・・(-_-;)。どうしようか。タクシーで帰る余裕はないし。調査不足によりまた失敗してしまった。待てよと、バス時刻表をもう一度よく見ると、もう一便、上にある淀川登山口から来るバスがあるではないか。助かった〜!ここで一泊しなければならないところであった・・・。ヤクスギランドからバスに乗り安房へ下る。バスは、屋久島自然館前までなので、そこからはタクシーで安房まで移動。予約しておいた民宿“とまり”に一泊する。少し冒険だったが無事帰ることができた。
夜は、民宿の前の居酒屋で刺身をつまみに一杯飲む。となりの席の人は佐賀県出身だが、今は屋久島に在住しているそうだ。その人の話によると毎年何件か行方不明になる遭難事故があるようだ。道に迷った場合、下っていくのは危険だ。更に道が分からなくなる。尾根に上がっていくのがよい。
新幹線の運賃を計算間違いしていたので所持金は、ぎりぎりだ。10:00民宿をチェックアウトし、高速船トッピーの出発時刻まで5時間30分も暇つぶしをしなければならない。高速船の乗り場のまわりをぐるぐる回るが時間は過ぎない。出発一時間前には、高速船ターミナルは、ザックを担いだ帰りに登山客でいっぱいになる。15:30トッピーは安房港を出港し、屋久島を離れる。山での出来事が蘇る。今回の旅は、本当に行き当たりばったりの大変な山旅だった。初めての山に行く時は、もっと綿密な計画を立て、余裕をもって山小屋に到着しなければならないといことを、身を持って学んだ。次回屋久島山行に活かそうと思う。トッピーは桜島を右に見て、鹿児島港へ入港する。21:00萩に着く。無事帰れたことを、屋久島の山の神様に感謝する。
新高塚小屋・初日はここに泊まるよていだったが・・・ |
新高塚小屋の木製デッキ(テントサイト) |
第一・二展望台付近 |
↑ 坊主岩だろうか? 宮之浦岳まであと2.1km。→ |
宮之浦岳山頂はここからは見えない。 |
登ってきた道を振り返る。 |
山頂はむすぐだ!!厳しい! |
ヤクシマアセビ |
宮之浦岳山頂(1936m)に達する。九州の最高峰だ。 |
平石岩屋付近を行く。 |
高層湿原・花之江河 |
石塚小屋に到着すする。収容は14名。 |
若者1名が先着 |
山行3日目・花之江河歩道を行く。 |
道標は5mおきにある。ザックが重く体力消耗する。 |
道に迷いそうになる。神秘的な森だ。 |
川を渡る。増水時は危険かもしれない・・・。 |
↑ 花之江河歩道を抜けヤクスギランドに出る。 〜大和杉〜 屋久島でナンバー2の長寿(推定3,000〜4,000歳と言われる)。 樹高34.9m 胸高周囲10.2m. |
ヤクスギランド ↑ 千年杉 |
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〜土埋木(どまいぼく)〜・江戸時代に切り倒された木。樹脂を多く含んでいる屋久スギは200〜300年たっても腐らない。 |
ヤクスギランド |
トッピーターミナル・時間が早いので誰もいない。 |
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安房港 |
トッピーで帰路に着く。 |
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